プロサバンナ事業「市民社会関与プロジェクト」対する抗議声明 〜抜本的な見直しに向けた要請〜

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2016年3月18日

 

外務大臣 岸田文雄様
独立行政法人 国際協力機構理事長 北岡伸一様

 

プロサバンナ事業「市民社会関与プロジェクト」対する抗議声明
〜抜本的な見直しに向けた要請〜

日本政府・JICAが三角協力・官民連携の目玉として主導し[i]、ブラジルの協力の下で始まったモザンビーク北部ナカラ回廊地域における大型農業開発プロサバンナ事業は、不透明で非民主的なプロセスにより、地域住民の圧倒的多数を占め地域農業の中心を担う小規模農民(小農)並びに農民組織(全国農民連合[UNAC]および傘下の州農民連合)によって、繰り返し批判と懸念が表明されてきました[ii]。2013年5月には、これらの当事者並びに広範なる市民社会組織から三カ国首脳宛に「公開書簡」が出され、事業を一旦停止した上で、情報公開を徹底することにより透明性を担保し、農民らの主体的な参加が可能となる民主的な協議メカニズムを設置した上で、事業の目的と手法を共に再考することが要求されました[iii]。これを受けて、主たる受益者で当事者でもある農民の主権の尊重、対話、説明責任の履行が事業の成否にとって極めて重要であることが3カ国すべての関係者の間で確認されるようになり、日本においては、外務省・JICAと日本市民・NGOが参加する意見交換の場が設けられ、情報交換と協議が続けられてきました[iv]
 しかしながら、同事業によって行われてきた「対話」と称するプロセスは、形式上のものに終始したばかりか[v]、和平後のモザンビークで培われてきた人権の尊重と民主的統治の原則をないがしろにし、農民組織や市民社会への介入や分断、人権侵害を引き起こしてきたために、UNACなど諸組織から激しい反発を招くこととなりました[vi]。その結果、事業は延期に次ぐ延期を余儀なくされ、当初の倍以上を超える期間と予算が費やされることとなりました[vii]
 それにもかかわらず、昨年秋にJICAによってプロサバンナ事業の一環として立ち上げられ予算措置された新規事業「市民社会関与プロジェクト」は、以下の【背景・経緯】で詳述するように、所期の課題である農民との意味ある対話を実現するどころか、現地社会に深刻な負の影響を様々にもたらす結果となり、2月19日にはUNACら9市民社会組織から非難声明「対話プロセスの不正を糾弾する」が発表されるに至っています[viii]。以上の事態を受けて、私たち日本の市民社会グループは、事業の抜本的見直しを改めて要請すると共に、ここに詳細なる状況説明を含めた抗議の声を声明として提出致します。
 なお、日本政府・JICAは、意味ある対話の実現という課題に対し、受益国の一義的責任を繰り返し表明しています。しかし、本事業のように多数の農民に広範かつ深刻な影響を及ぼしかねない大規模農業開発事業を実施する場合、農民にとって最も望ましい形で情報公開や対話が実現されるようにする責任が援助実施機関にもあることは明らかです[ix]。事実として、当該プロジェクトは、JICAが日本のODA資金を用いて現地企業と契約して推進するものであり、その契約並びに業務指示内容もJICAが定めており、契約企業やコンサルタントが行う業務の進め方やその結果として生じる事態への責任はJICA・日本政府にあることは免れないものです。法的にも倫理的にも、生じた問題のすべての責任を受益国に押しつけることはできないにもかかわらず、そのような発言を繰り返すことは責任放棄と批判されても仕方ないものです。これまでプロサバンナ事業の問題に関心を寄せ、推移を見守ってきた私たち日本の市民グループは、JICAおよび外務省には、次のような責任が所在すると考えます。
 
①    「小農支援」「農民主権」を謳いながら、その意見を尊重し反映しないプロセスを強行することによるODA資金の不適切な活用と質の低い援助の実施。
②    反対や異論を唱える者がいる事業を強行することに伴う社会的混乱に対する情報収集および配慮の欠如、それを未然に防ぐための努力(Do No Harm原則)を怠った不適切業務。
③    計画に大幅な変更が生じたにもかかわらず[x]、その変更手続きを怠り、PDCAサイクルの形骸化を招いたことによるODAの制度改善努力への責任放棄。
 
 もし、日本政府がこれらの責任を無視し、このままプロサバンナ事業や関連プロジェクトを強行すれば、日本のドナーとしての資質や責任性を問われるだけでなく、これまでの日本のODAに対する評価を著しく傷つけるものとなることは間違いありません。
 以上のことから、私たちは、日本がドナーとして責任を果たし、援助国としての資質と国際評価の維持を図るためにも、次の4点の抜本的な方策を早急に取ることを要請します。
1.    現在、主としてUNACやその加盟農民組織や個人、コミュニティに対して行われている「キャンペーン」などを一旦中止すること。
2.    プロサバンナ事業の一環としてなされるJICAの「市民社会関与プロジェクト」によって引き起こされている市民社会および農村社会における混乱と分断を防ぎ、UNACなどの主たるステークホルダーからの不信をこれ以上拡大しないために、JICAの契約と業務指示書に基づいて契約企業(MAJOL社)が進める「対話メカニズムづくり」のプロセスを一旦中断し、マスタープランをゼロベースで見直す方針を表明すること。
3.    プロサバンナ事業に関連して行ったすべての活動とその結果に対し、中立な立場で調査し評価する「プロサバンナ緊急調査評価チーム」を早急に立ち上げ、これまで指摘されてきた問題点の事実関係を明らかにし、現在までの開発効果を評価測定し、根本的見直しの方策を提案させること。なお、透明性と公正性の確保の観点から、調査評価チームは外務省・JICA外に独立のものとして設置され、メンバーにモザンビークおよび日本の学術界、主要当事者団体(UNACなど)、市民社会からの代表を含めるものとする。
4.    上記の緊急調査評価は、参議院ODA特別委員会で報告され、その提言に基づき、モザンビーク小農支援のあるべき方策を議論する。その結果を上記調査評価報告書と共にモザンビーク政府およびUNAC、市民社会などすべてのステークホルダーに送り、広範なる農民・市民の参加の下にラウンドテーブルで議論し、今後の日本の援助に役立てる。これに伴う経費は、日本がODAで負担する。
 最後に、私たち日本の市民グループは、過去3年以上にわたって協議のパートナーとして16回の意見交換を積み重ねてきたにもかかわらず、JICAおよび外務省の不適切な対応によって問題が悪化し、このような声明を出さざるを得なくなったことに、深い失望と憤りを禁じ得ないことを申し添えます。
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【背景・経緯】
1. 共通の原則と認識
2.不適切な「対話」の繰り返しによる事態の悪化とODA予算(税金)の無駄遣い
3.2015年7月のUNAC農民代表団の来日による要求から現在までの経緯
(1)秘密裏に進められた「市民社会関与プロジェクト」の立ち上げと現地企業との契約
(2)JICAによる契約・業務指示の問題(a):不透明・非民主的で拙速なプロセスの促進
(3)JICAによる契約・業務指示の問題(b):異論者に対する排除の論理の促進
(4)JICAによる契約・業務指示の問題(c):「市民社会のオーナーシップ」という不正
(5)JICAによる契約・業務指示の問題(d):契約履行のためのMAJOL社による嘘・強要
4.UNACなど9市民社会組織による抗議声明:「対話プロセスにおける不正を糾弾する」
5. JICAによる契約企業選定の不透明なプロセスと現地からの批判の軽視と無対応
6.小農の連帯・エンパワーメントを損なうUNACへの介入・圧力・分断の促進
7.JICAの別契約によって策定された「社会コミュニケーション戦略」活用の問題
8.紛争予防・ガバナンスを軽視した援助外交

【背景・経緯を省略。全文→http://mozambiquekaihatsu.blog.fc2.com/blog-entry-195.html
http://farmlandgrab.org/uploads/attachment/【掲載用】プロサバンナ対話プロセス抗議・要請声明.pdf

 

以上に詳しく記した現地の人びとの声、現地・政府・JICAからの情報、現地状況の分析に基づき、私たちは日本の国民・納税者・市民として、冒頭に記した4点の要請を行います。
 最後に、本事業に多額の日本市民の税金が使われている事業であること、政府開発援助(ODA)の実施機関であるJICA自らのミッションや環境社会配慮ガイドラインの目的[xi]、そして開発効果に関する釜山宣言の「パートナーシップ」という考え方に基づけば、当然ながらドナーである日本政府には大きな責任が伴っていることは明らかであることについて、再度申し添えます。

 Original_noteprosavana_reuniao_nampula_majol_consultores_11 【賛同団体・個人】


アフリカ日本協議会
日本国際ボランティアセンター
ODA改革ネットワーク
FOE Japan
ATTAC Japan
No! to landgrab, Japanモザンビーク開発を考える市民の会
菅波完(高木仁三郎市民科学基金事務局長)
*本日より、賛同署名の呼びかけを開始しています。

 


[i]JICA http://www.jica.go.jp/topics/person/20120824_01.html
外務省公電資料(在モザンビーク並びにブラジル日本大使と外務大臣の間の2009年度の公電)
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/files/000082999.pdf(2014年度第3回ODA政策協議会2015年3月27日開催 NGO側資料)
[ii]UNAC「プロサバンナ声明」(2012年10月11日)http://www.ngo-jvc.net/jp/event/images/UNAC%20Pronunciamento%20.pdf  UNAC年次総会声明「イニャンバネ・ギウア宣言」(2013年5月9日)では、「事業の不透明性、対話の不在へ」の非難と「公平な協議」が求められる一方、「大型開発の限界」が指摘されている。http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy-statement/data/20130509.pdf
[iii]公開書簡(2013年5月28日)「プロサバンナ事業における巧妙なる操作。同事業に反対し、農業部門の持続可能な発展のための代替案を提案するコミュニティや市民社会組織に対する脅迫…憲法で我々に保障された情報・協議・参加へのアクセス権の行使という点において、法律を遵守しておらず、民主的で透明で幅広く深い公衆(農民男女、家族、民衆)との討論を欠いている…アクセスできたごく限られた情報や文書にすら、深刻な情報の食い違いや内在的な矛盾があることに気づかされた…協議、住民参加と呼ばれるプロセスが不正に満ちている」。
http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy-statement/data/20140624-oda-public%20letter.pdf
[iv]2013年1月に、NGO・外務省定期協議会内ODA政策協議会のサブグループとして「ProSAVANA事業に関する意見交換会」が設置され、現在までに16回の意見交換会を共同で開催してきた。
過去の議事要旨の掲載先→ http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shimin/oda_ngo/taiwa/prosavana/index.html
NGO側資料の掲載先→ http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/
[v]「ProSAVANA事業で長引き、悪化してきた諸問題に関するNGOの見解と資料一覧〜なぜ援助を拒絶したことのなかったモザンビークの農民や市民社会は日本政府・JICAに怒っているのか」(第15回、2016年2月19日)NGO側資料http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/activities/201508prosavana.pdf 「プロサバンナ事業における参加に関する苦言」(第3回、2013年4月19日)NGO側資料http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/3kai_shiryo/ref8.pdf 
[vi]ナンプーラ州市民社会プラットフォーム(PPOSC-N)による声明(2013年)では、「ProSAVANA推進者らによって進められてきた、モザンビーク市民社会に対する分断、分裂化、弱体化の試みに表される各種の工作活動と脅迫について、遺憾の意を表明する。…JICA(日本の国際協力)が、時に技術者として、時に外交官として、時に相談役として果たす不明瞭で不透明な役割…遺憾の意を表明する」。http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy-statement/data/20139030.pdf その他の現地市民社会組織の声明は、右記サイトに掲載されている。http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy/prosavana-jbm.html
[vii]当初は2013年9月までであったマスタープラン策定事業(ProSAVANA-PD)は、現在まで延長されている。当該事業のJICA契約コンサルタント(オリエンタルコンサルタンツ等)への拠出額については、当初期間内に2.76億円が支払われる一方、延期後2015年2月18日までに2.83億円が支払われている。
[x]この詳細は次の2つの報告書を参照。いずれも政府・JICA側資料など一次資料・出典を含め掲載している。「ProSAVANA市民社会報告2013」(2013年4月10日) http://www.dlmarket.jp/products/detail/263029 「ProSAVANA事業考察:概要・変遷、そしてNGOからの提言」(2014年10月28日)http://www.ngo-jvc.net/jp/projects/advocacy-statement/data/proposal%20final.pdf
[xi]JICAガイドラインは冒頭の目的で、「本ガイドラインは、JICAが行う環境社会配慮の責務と手続き、相手国等に求める要件を示すことにより、相手国等に対し、適切な環境社会配慮の実施を促すとともに、JICAが行う環境社会配慮支援・確認の適切な実施を確保することを目的とする」と明記し、JICAが担う役割を明確にしている。
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