「プロサバンナ・コミュニケーション戦略書」と背景("ProSAVANA: Communication Strategy" and its background)
【背景】
*詳細は末尾の年表参照。(年表は資料2を参照)
1. 2012年10月のUNAC(モザンビーク農民連合)による非難声明、日本での外務省・JICA・NGO間のプロサバンナに関する「対話」の開始直後、コミュニケーション戦略が3カ国政府によって立てられ、JICAの資金により現地コンサルティング企業との契約により「戦略書」とその実施がなされてきた。
2. しかし、3カ国市民社会には一切説明はなく、情報が秘匿される形でこれらが進められてきた。2013年4月の第一次リークにより、「コミュニケーション戦略の確定」が合意されたことが分かったが、その後10回近くを重ねた意見交換会でも説明はなく、2015年に開示請求を出して初めて契約の一端が明らかになったものの、再度の開示請求の開示延期を経た2016年1月19日まで「コミュニケーション戦略書」の入手は実現しなかった。
3. 開示された「戦略書」はポルトガル語のもののみであり[1]、2016年8月22日に「分析ペーパー」が英語・ポルトガル語で出されるまで、その概要・内容は市民社会側に把握されていなかった。
【関連文書に記載されていること】
(1) 2012年12月3日ナンプーラでの3カ国調整会議録[2]には以下が明記。
① プロサバンナの「コミュニケーション戦略プラン」を合意
*CV&A社との契約添付書類「Communication Strategy in the framework of ProSAVANA」[3]
② これに基づき、「(1) 市民社会に早急にリーチするための社会コミュニケーション戦略の設置の重要性を確認」し、コンサルタント/企業との契約開始を勧めることを合意」
* その他、ロゴやパンフレットに関する事項が記載。
(2) 2013年7月、JICA「プロサバンナのためのコミュニケーション戦略確定プロジェクト」を立ち上げ、既に一度契約した(2012年12月〜2月)CV&A社を契約。
① JICAは、「プロサバンナのコミュニケーション戦略の形成と実施」を目的とする契約をCV&A社と締結(2013年8月1日)[1]。
② 2013年9月に「プロサバンナ・コミュニケーション戦略書」[2]の完成と確定
(3) プロサバンナ公式文書(JICA公式開示)「プロサバンナ・コミュニケーション戦略書」概要
① プロサバンナのロゴマークが表紙&すべてのページに記載。著者・発行元も「ProSAVANA」となっており、CV&Aの名前は一切記されず。
② JICAによって公的に開示された文書である。
③ 50ページからなる。(活動案が追加で4ページ)
④ わざわざ「最終版」「ポルトガル語版」と記されている。
⑤ 目次(章立て)
1. 分析
2. ターゲットの分類
3. コミュニケーションのルール
4. コミュニケーション・アクションの提案
5. コミュニケーション・ツール
6. 優先活動とツール
7. 活動予定案
(4) 声明に取り上げた点の該当箇所(ごく数例、詳細は原文参照)
① 4.3.「組織化された市民社会とともに発展させる活動」(4章 コミュニケーション行動案)
*「戦略書」全体で、「アソシエーション」を市民社会組織の「組織」に適用。
【対訳】
l これらの会合では書かれた記録が作成されなければならず、またビデオと音声で記録されなければならない。こうすることによって、これらの会議に出席した者が何を話し、どのようなポジションをとったのか、批判不可能な証拠を得ることができるからである。
l 市民社会諸組織のモザンビークのメディアに対する影響力については、プロサバンナが(メディアと)継続的なコミュニケーションを保持することで、特にモザンビーク組織の実効力を減らしていくものとする。
l (プロサバンナが)コミュニティとの直接的なコンタクトを行うことによって、コミュニティあるいは農民を代表するこれらの組織(アソシエーション)の価値/信用を低める(desvalorizara/devalue)ことができる。(「戦略書」p. 34)
【対訳】
l モザンビーク市民社会諸組織の重要性を奪うことによって、モザンビークで活動する外国NGOの力を削ぐことができる。さらに、その結果として、これらの組織からのメディアへのコンタクトも減る。
l また、コミュニケーション戦略に従い、ブラジルのセラードとナカラ回廊の結びつきを遠ざけることにより、これらの国際NGOが去年来使用してきた主要な論点のいくつかに関して信用を低下させることが可能となる。(「戦略書」p. 35)
【対訳】
それでも、その影響力が継続するならば、以下のアクションを勧める。
l 組織化された市民社会が特定した諸懸念に対して、間接的に、応えるための回答とメッセージを準備すること。
l モザンビークで果たされている外国の諸組織の役割について問題化する、あるいは批判する(この批判については、モザンビーク当局の側によって推進される)。(「戦略書」p. 35)
【対訳】
国際メディアの多くがこのような供与を受け入れない傾向にあるとはいえ、プロサバンナは、常に(取材)費用支援の供与を行わなければならない。(「戦略書」p. 34)
【対訳】
4. コミュニケーション・アクション案
4.1. 回廊のコミュニティで発達させるべきアクション
4.1.1. コラボレーター(協力者<複数>)による郡ネットワークの形成
モザンビーク政府の許可後、SDAE(郡経済振興局、プロサバンナのカウンターパート)と共に、(コラボレーター)になれる諸個人を特定し、これら全てと週末を使って、局長らと共に、集会を行い、プロサバンナに関する訓練/研修を行わなければならない。この訓練/研修は、州政府関係者やDPA(州農業局)関係者を招くこともできる。(「戦略書」p. 23)
[1] 同上契約書 http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/docs/101.pdf 同上TOR(業務指示書)http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/docs/102.pdf
[2] 2013年8月の契約書の成果物の開示を請求し、延期の上、2016年1月に開示http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/docs/104.pdf
[1] 最終報告から消されたMAJOL社のインセプションレポート案には、参考資料として「戦略書」の英語版の存在が記されているが、これは現在まで開示されていない。
[2] 2013年4月の第一次リーク文書https://www.grain.org/article/entries/4703-leaked-prosavana-master-plan-confirms-worst-fears
[3] 同上リーク文書に記載された3カ国合意「コミュニケーション戦略のコンサルタント契約」の一文をもとにJICAへの情報開示請求(2015年11月)の結果、12月に開示。 http://www.ajf.gr.jp/lang_ja/ProSAVANA/docs/103.pdf